詳しくは、下にある「2014年度 滋賀民研研究集会チラシ」をダウンロードしてください。
2月研究集会 テーマ「子どもとともに生きる教師、その希望」 研究委員会 本田清春
学校・教師が置かれている現実
①教育改革と学校の現実
この10年間、教師と学校は荒波に飲みこまれた難破船のごとく、どんなにあがいても出口が見いだせず、強風と荒波に漂うことを強いられる乗組員のような苦悩を味わってきたと言えるのではないか。次々に押し寄せる大波のような教育改革は、学校の自主的判断の権限と、教師集団の同僚性と創造力を周到に奪い、地域と保護者と学校の関係を変えていった。
政策を作成する側からは、「今の子どもはだらしがない」「学力が身についていない」という現状認識が下され、教師と学校は「子どもをしっかりさせる」「学力をつける」ところへと転換することが求められた。こうして全国学力テスト実施の路線が引かれ、2007年度よりそれは実施された。同時に子どもの失敗に不寛容なゼロ・トレランスが持ち込まれ、生活規範の押し付けが強まった。日本の子どもたちは、学力テスト体制の学校のもとで長時間の勉強を強いられ、「よい子」でなければ認めてもらえない状況下で生活している。この全国学力テストのモデルになったのは、新自由主義アメリカ発のNCLB(NO Child Left Behind)法であるが、この法律の実施は大量のドロップアウトを生み教育水準を低下させ、公教育を破壊する狙いを持ったもので、この法律立案者からの自己批判も出されているものである。
学力テストの実施とともに、その結果を受けて各学校には「教育分野のPDCAサイクル」が下ろされ、教育活動の結果を検証するとして学力テストの結果によって評価される仕組みを確立していった。だが、学力テストの結果が果たして教育活動の結果によって生み出されているのかの検証はされないままである。
②教師・学校をしばる外部からの評価システムの導入
滋賀県の人事考課制度は、来年度から教員評価と賃金をリンクさせる制度に「進化」させようとしてきているが、全国的な人事考課制度は2000年頃から始められた。この制度は教師の管理と監視を行うもっとも露骨なシステムである。また、学校そのものを評価し競争に巻き込むためにつくられたのが、学校選択制であり学校評議員制度である。市場原理システムのもとでの外部の評価と目標管理でもって学校と教師を支配できるように考え出されたものである。こうして今や学校は、外側から教育目標が与えられ、教師は与えられた目標を忠実にこなしていくのが「よい教師」像という偽善的な像が持ち込まれてきている。
教師から当事者意識を奪い、行政と保護者からクレームを受けない、目立たない教師像が支配する教師と学校の苦悩は深まるばかりである。
苦悩のなかに希望を
教師、学校支配システムは全国を覆ってきているが、しかしその強さは地域間さらには学校間でみれば一様ではない。このシステムによって子どもも教師も不安を抱え、息苦しさと、生きにくさを抱えてきているのはおそらく間違いないだろう。言うまでもなく子どもたちは、学力がない自分はダメだと思いは強くなってきているだろう。こうした子どもの実感に向き合い、彼らの中に人生の展望を生み出す実践はどんなにささやかなものであっても貴重なものである。教師の抱える苦悩と子どもたちの自己否定の感覚が響きあい、ともに展望を作りだす教育が生み出される可能性が生まれている。そのためには、子ども一人ひとりの不安を読み解き、子どもが安心できる自分に転換できるように援助し、指導していく子ども理解の深化は今日的な実践課題である。
また県内では、大津いじめ自殺事件が起こり、いじめ問題を考え合う社会的基盤は生まれつつある。いじめ克服を模索する教育実践を深め、教師の横の連帯を生み出す教育実践が求められるが、それはおそらく子どもを安心へと導く実践として展開されるのではないだろうか。個別化され、競争システムによって敵対化させられている子ども世界を平和と安心に組み替える教育実践を創造する可能性は広がっているといえる。
2月に2013年度 滋賀民研研究集会が開催されます。
詳しくは、下にある「2013年度 滋賀民研研究集会チラシ」をダウンロードしてください。
滋賀県民主教育研究所 (略称/滋賀民研)
2013年度 研究集会
テーマ:青年・子どもが求める真の学習とは
【1】10:00 趣旨説明(事務局)
【2】10:15 シンポジウム
「青年・子どもが持続した学習意欲を持つ学習とは」
シンポジスト:小・中・高校の教師
コーディネーター :滋賀大学教育学部 岸本 実さん
【3】質疑
【4】13:00 講演
「青年・子どもが求める真 の学習とは」
福田 誠治さん (都留文科大学)
◇定 員:50人
■参加ご希望の方は、当日、飛び入りも大歓迎ですが、 資料準備、会場設営等の
必要上、前々日までに,下記へ、メール、ファックス等で、お名前・連絡先を
明記 してお申し込みください。定員になりしだい締め切ります。
◇参加費:資料代 会員・学生500円、会員外1000円
◇と き:2014年2月16日(日)
9:45受付
10:00開会~16:00閉会
◇会 場:滋賀大・大津サテライト・プラザ
<JR大津駅前の日生ビル4Fです>
◆講師は、比較教育学のすぐれた研究者で、日本の教育政策の行き詰まりをフィン
ランドの教育との比較で明らかにする福田誠治さん。
◆「テストもないのに勉強する」これがフィンラ ンドの教育。教育の面白さの追求。
一方日本の教育は事細かくマニュアル化され効率優先、ドリル重視。さらに点数の
公表で学校間、教師間競争させる。
◆フィンランド教師は、事務報告、その他の文書作成は月1.1回。授業の運営は個々
の教師に任され、管理者への文書作成は不要。家庭で過ごす時間は7時間13分。
教師にとって「最も重要なのはモチベーション。教師の意欲、生徒の学習意欲
こそが核心」
◆多くの方のご来場と討論への参加をお待ちしています。
◆どなたでも参加いただけます。
□講 師:福田誠治さんプロフィール
■1950 年生まれ
■現 在:都留文科大学教授、副学長
■研究テーマ
近代化と人間形成、言語と能力形成
■主要業績
・『競争やめたら学力世界一フィンランド教育の成功』 2006年朝日選書
・『格差をなくせば子どもの学力は伸びる驚きのフィンランド教育』
2007年亜紀書房
・『競争しても学力行き止まりイギリス教育の失敗とフィンランドの成功』
2007 年朝日選書
・「全国学力テストと PISA いま学力が変わる」国民教育 文化総合研究所編
アドバンテージサーバー2007年
・『子どもたちに「未来の学力」をフィンランドの学力観に学べ』2008年
東海教育研究所
・『フィンランドは教師の育て方がすごい』2009年亜紀書房
主催:滋賀県民主教育研究所
大津市朝日が丘1-11-3 教文会館2F
tell & fax:077-525-5364 <不在時、080‐3861-7466本田>
eメール:shiga-minken@gmil.com